日常とかイベント情報とか更新状況とか。なんでティダスコ流行らないのか知りたくて生きてる感じ。そんな感じ。
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山都さんちの精霊さんパロがかkっかかっかかくぁいすぎて発狂しそうww
ティーダさんがイメージ通りすぐるんだ、かっこいいい////
私も山都も、某王国の某お芝居に感化されまくってます。
カっとなってうちでも精霊パロ始め・・・るような始めない様なです。
山都さんが描いてくれたフリオとのイメージとまるで違くて、
「あ、私たち噛みあってねぇwww」て思いました。
人の感性なんてみんな一緒だったら怖いもの、仕方ないよね
珍しく3時間くらいでかいたやつを送ったところ、向こうも私との感性の違いにびっくらしてるようですwww
サイトに置けばいいと言われたので、と、とりあえずここの続きを読むで精霊さんパロを載せて見ました。
というよりフリオニールが可哀そうなお話がはっじまるっよー
追記を読むじゃ文字数多すぎてダメだってよwwww氏ね、私氏ねwww
ティーダさんがイメージ通りすぐるんだ、かっこいいい////
私も山都も、某王国の某お芝居に感化されまくってます。
カっとなってうちでも精霊パロ始め・・・るような始めない様なです。
山都さんが描いてくれたフリオとのイメージとまるで違くて、
「あ、私たち噛みあってねぇwww」て思いました。
人の感性なんてみんな一緒だったら怖いもの、仕方ないよね
珍しく3時間くらいでかいたやつを送ったところ、向こうも私との感性の違いにびっくらしてるようですwww
サイトに置けばいいと言われたので、と、とりあえずここの続きを読むで精霊さんパロを載せて見ました。
というよりフリオニールが可哀そうなお話がはっじまるっよー
追記を読むじゃ文字数多すぎてダメだってよwwww氏ね、私氏ねwww
フィン王国の領土にある辺境の地、アルテア。そこで俺は生まれ育ってきた。本国に比べれば、交通の便も悪く、電車もバスも1時間に一本通れば早い方だと思うくらいだ。田舎町ではあるけれどアルテアの町を囲む自然は世界遺産三景にも選ばれかけたもので、観光地としては知らないものは居ない程だった。
北を向けばパルムの町との間に、美しい青の泉がある。泉の底のどこかしらから海に繋がっていて、海水が混ざり込み、次いでは湖にパルム近海の珊瑚焦で育った魚たちが泳いでいるとの噂もある。環境保護区となった今では、泉に潜ることはもちろん、釣りをしたり、冬になって凍りきった湖の上でスケートをすることも王国環境省のお偉いさんを通さないと許されない事になっているから、本当に海魚が住んでいるとは解らず終いだった。ただ『泉に近づくこと』だけは許されていて、多くの観光ファンや写真家たちが訪れた。帰って来たものは、皆口をそろえて言う。「美しすぎて、近づくのが怖かった」と。
南を向けば見渡す限りの海が広がる。パルムにも海はあるが、砂浜の美しさではアルテアの方が数段上だった。パルムに比べ、砂が細かく柔らかい。裸足で歩かないと靴の中が砂流でとんでもないことになる。砂の一粒一粒がまるで作られたもののように、金平糖のような形をしていて、鋭い角が太陽に浴びせられるたび、金色に輝く。月光を浴びれば、波に寄せ押される浅瀬の砂はガラス球を粉々に砕いたように輝くという。アルテアの海は例年穏やかで、波が荒ぶることは梅雨の時期を除けばそう無いものだ。海水浴場の穴場となっており、毎年夏になると観光客が押し寄せる。皆、その砂の美しさに心奪われ、持ってきた瓶やらフィルムケースやらに詰めて持ち返るが、彼らが帰郷した頃には、文字通り、ただの砂になっている。アルテア海の砂は、アルテアの太陽と月の下でしか輝くことは無いのだ。
俺はその湖と、海との丁度真ん中にある、アルテアの中心部から幾分離れた山奥の民宿に住んでいた。といっても、住み始めたのはつい1年前の事で、あれは17歳を迎えた時だった。
5歳の時に両親を亡くし、一人になった。まだ父と母が死んだと理解できる歳ではなかったから、その事実を隣に住んでいた小父さんに聞かされた時、意味が解らずきょとんとしていたと言う。何も知らない俺が笑いながら、「父さんと母さんはいつ帰ってくるの?」と聞いた時、小父さんはまだ青いトロピカルフルーツの果汁を飲みほした後のような顔で「もう二人には会えないんだよ」とだけ告げた。
父と母が社交的な性格だったのが救いになった。二人が生前仲良くしていた、その悲しい宣告を告げてくれた小父さんの家に引き取られることになった。二人には兄弟もなく、あの頃は意味も解らなかったが、駆け落ち状態で結婚し、母は俺を産んだという。となれば、二人の両親にはきっと受け入れてもらえなかっただろう。
隣に住む小父さんは、とても穏やかで良い人だった。既に離婚を経験していたが、男手一つで二人の兄妹を育てているというのに、更に俺の面倒までも見てくれた。学校も義父という手続きを済ませてきちんと行かせてくれた。俺が中学校に上がった頃、こんなに優しい小父さんと離婚するようなマヌケな女性の顔を見てやりたい、と冗談で言うと、小父さんは黙ってマリアを指さした。マリアは濃いグレープ色の髪をなびかせ、背負っていた学生鞄を降ろし、俺と小父さんの視線に気がついて「なに?」と聞き返した。「母親にそっくりだ」耳元でこっそりと教えてくれた。
マリアと、その兄であるレオンハルトとの仲も順応だった。マリアは世話焼きで、俺より一つ歳下なのだが何かとお姉さんぶっては俺の面倒を見てくれた。大人ぶってはいるが、時に甘えてくることもあって、彼女の溜めた宿題をしょっちゅう手伝わされることもあった。マリアが俺に懐いてくれたのは、兄のレオンハルトのせいでもあったと思う。マリアと同じ色の髪を短く刈り上げ、図体の大きい、逞しい兄だった。小父さんやマリアのように「優しい」とは言い難い。どちらかと言えば、頭が固く、厳しいのだ。俺とマリアが自転車で二人乗りをしていたとき、ふいにブレーキが壊れてしまって、二人で川につっこむという事件があった。とっさに受け身をとった俺はかすり傷くらいで済んだけれど、運悪く川辺の岩に腕をぶつけたマリアは、全治3週間の怪我を追ってしまった。
ずぶ濡れで、壊れた自転車を押しながら帰る途中、高校から返ってきたレオンハルトに出くわした。しまった、と思った。二人で無茶な遊びをしていた事はすぐに知れると解っていたが、まずは小父さんに知らせて、優しく宥めて欲しかったのに。マリアも同じことを考えていたのだろう。怪我した腕を俺の背中に隠すようにして、俯き、怒鳴られる前からぽたぽたと涙を流した。
レオンハルトは怒鳴らなかった。代わりに俺の顔面を、その拳で殴りつけた。1発、2発、3発目でマリアが叫び、レオンハルトはようやく拳を止めた。
俺は殴り返す事も、防御する事も出来ずに、マリアのぶつけた岩よりずっと固い拳で殴られ、レオンハルトの中にある、俺への不満を感じた。
無口で、無愛想な兄だったが、俺への当てつけのようなマネは一切してこなかった。むしろ、無言で俺の事を見守っていてくれているのだと信じていたのに・・・ずっと溜めこんでいたのだと思う。大切な妹を、どこの馬の骨ともしらない赤の他人と戯れることが。
兄妹も―― ましてや両親も―― 本当の家族がいない俺が、それに気がつくまでに、随分と時間が掛ってしまった。
「小父さん、俺やっぱり大学はいかない事にする」
高校の進路相談の時に、俺ははっきりとそう言った。リビングには小父さんと、マリアと、それからレオンハルトも居あわせた。
「どうして?フリオ、ずっと農学部に行きたいって言ってたじゃない。お花のお医者さんになりたいから、もっと勉強したいって言ってたの、フリオじゃない」
小父さん宛てに言った言葉に、マリアが返してきた。髪と同じ色の深い紫の瞳が、心配そうに俺を見つめる。作り笑いでそれをかわし、もう一度小父さんに向かって言う。
「花の勉強は独学でだって出来る。前に読んだ本でも、大学なんていかなくても樹木医になれたって人もいたし・・・」
小父さんは黙ったまま、口を真一門に閉じていたが、俺には微笑を浮かべているように見えた。俺のバイト代だけじゃ大学の授業料なんか払えっこないから。足腰が弱ってきた小父さんが、「フリオの為に働かなくて済む」と小さくほくそ笑んだように見えた。
「確かに、それもいいかも知れないね。フリオは賢いから、きっと独学でも」
「大 学 な ん て ?」
小父さんの声を遮って、レオンハルトの低い声が俺に向けられた。
「それは行きたい大学に進めずに、妥協して受かった大学に進んだ俺への嫌味か?当てつけか?」
「そんな、」
「フリオニール」
レオンハルトが、俺の名前をフルネームで呼んだ。彼に名前を呼ばれるのも久しぶりだったせいか、何故だか身体が震えだした。
「お前は、何だ?誰なんだ?父さんの息子でもない、マリアの兄でもない。俺の弟だなんて抜かしたら、今すぐ追い出してやるからな」
カラン、とマリアの握っていたスプーンが床に落ちた音がした。それ以外は、何も聞こえなかった。
黙ったまま、じっと見つめてくるレオンハルトの視線に首を絞められながら、よろよろと椅子から立ち上がった。こんな状態な俺でも、宣戦布告に殴られるとでも思ったのか、それともまたあの時のように憎しみを握りしめた拳で殴ろうとしたのか、レオンハルトもすっくと立ち上がった。俺たちが殴り合うのではないかと予想した小父さんとマリアも立ち上がり、結局、テーブルを囲んで俺たち4人は突っ立っていた。
レオンハルトは手を出してこなかった。代わりに、拳よりも痛い視線で睨み続けて来た。
緊張で口が渇ききっていて舌が上あごにくっついたままだったが、それをゆっくり引き離す。
「今まで・・・・」
頭は上げられなかった。レオンハルトの固く握られた拳を、マリアの震える腕を、小父さんのか弱くなった腰を順に見た後、
「・・・・・申し訳ありませんでした」
謝ることだけしか、出来なかった。
「ありがとうございました。またのお越しを、心よりお待ちしております」
早朝、宿の入口で熟年夫婦の背中に一礼する。奥方が振りかえり、頭を下げる俺にうふふと笑いかけた。宿の外に停められていた送迎用の車に先に乗りこもうとする旦那様に、小走りで追いつき、クスクスと笑いながら俺を振りかえる。
遠くてよくは聞こえなかったが、「うちの子よりずっと真面目ね、こんなことろに居るのが勿体ないわ」。そんなような事を旦那様に囁いていた
おそらく、俺と同い歳くらいのお子さんをお持ちなのだろう。「うちの子」とやらがどんな人物かは知らないが、褒められたことには変わりない。けれど、後半部分に聞こえたことは、胸の中に溜まって黒く沁み渡った。
「今まで、ありがとうございました」と言うことが出来なかった。偽りの家族の元を離れて1年が経っていた。高校時代に大学へ進むための資金になればいいと、必死にアルバイトで溜めた金を全部引き下ろして、俺はアルテアの町をさまよった。2・3日、安いホテルを探しては転々と居場所を変えて、これからの事を考えようとしていたが、真夜中の繁華街で、マリアを見かけた。彼女に見合わない怪しげなネオンに包まれた裏路地で、きょろきょろと不安げに辺りを見渡していた。そのまま彼女を追跡するとその夜、俺が部屋を
とっていたホテルへと一人で入って行った。勘がいいな、とも思ったが、彼女が現われた場所も安いカプセルホテルだったから、この周辺を虱潰しに探しているようだ。
数十分後、彼女は俯きながらホテルから出てきて、夜の街へと消えて行った。ホテルの従業員に、「俺を探しにきた人が来たとしても、何も言わないでくれ」と告げていたおかげだった。もっとも、従業員はなにかしら事情のある客を何度も目にしているのか、俺が頼んだ時も、はいはいと簡単に引き受けてくれた。絶対に申し上げませんよ、と言うよりは面倒事に巻き込むなよ、といった顔だった。
これ以上、中心街をうろついていたらマリアに見つかってしまうかもしれない。次の朝、俺は一番安い鈍行列車の切符で、出来るだけ一番遠くへと向かうことにした。
それがここ、アルテアの町を遠くに一望できる山奥の民宿だった。古本屋で買ったガイドブックの片隅に、ほんの小さく載っていた宿だったから、ものしかしたらもう廃業してしまってるかもしれないと、山道を登りながら考えていたが、民宿は、確かにあった。
日が沈む直前だったから、真っ赤な夕日に染められた宿は印象的だった。平屋建ての、古い民宿。良く言えば味がある。悪く言えば・・・幽霊が出そうなくらいボロくみえた。
今更止めにして、山を下るわけにもいかない。扉を叩いても返事がなかったので、建てつけの悪い扉をガタガタ言わせながら開け開いた。
「ご、ごめんください・・・・今晩、泊めて頂きたいのですが」
不安が抜けきれなかった。電気もついておらず、真っ暗な入り口は外からの夕日が指し込んで、長い廊下をまるで血のように真っ赤に染め上げていた。引き返そうかと、足を動かすのも億劫なくらい疲れているのに、赤く染まった廊下の奥から、人影が見えた時、反射的に踵を返して逃げ出そうとした。
ガリッ
建てつけの悪かった扉の冊子に足を取られ、身体は一瞬宙を舞い、すぐに地面へ叩きつけられた。腹から思いっきり倒れ込んで、背負っていたリュックサックから空のペットボトルが飛び出してコタンコタンと転がり回った。
背後から迫る、人影が、地面を見つめたままの俺に振りかかる。ジャリ、と砂を踏む音がして、大人しくなったペットボトルに、しわくちゃの手が伸びたのが見えた。
顔を上げる。枯れ果てそうな手の持ち主は、予想していたよりも若い女性だった。初老で、白髪混じりのその女性はペットボトルを片手に握ったまま、もう片方の手を俺へと差し出してきた。眼尻に皺を寄せて、優しく微笑む。刺し伸ばされた手を握れば、とても暖かかった。思えばこの数日、自分以外の誰かの身体に触れていなかった。だからこそ、この時にもう解っていた。この人はきっと、俺を受け入れてくれるだろう、と。
「びっくりさせちゃったみたいで、ごめんなさいねぇ」
「い、いえ、こちらこそ」
膝に付いた砂を払いながら、もう一度宿の玄関へと立つ。この女性・・・女将さんが壁にあったスイッチを入れると、宿内は一気に明るくなり、外からの夕日を浴びて、今度はオレンジ色に染まっていた。驚いた。外見はあんなにぼろく見えたのに、中はまったくそれを感じさせない。艶めいた漆塗りの廊下に、アンティークな形をした照明がいくつも並んでいて、早く宿の中へと入りたい気持ちでいっぱいだった。
「えぇと・・・、一泊でよかったかしら?」
帳簿を見ながら、女将さんが問いかける。
「はい、とりあえずは」
「とりあえず?」
しまった、と思った。アルテアの町にあった安ホテルの従業員とは違って、この人は見るからに教養がありそうだ。どう見ても未成年な俺を、そう何日も一人で泊めてくれるだろうか。
俺の心配をよそに、女将さんは何も聞かなかった。料金を払おうとする俺に、後払いで結構ですよ、と告げる。
「1泊おいくらですか?ガイドブックには、時価って書いてあるんですけど、これって・・・」
「値段は、お客様に決めて頂いております」
「は、はぁ・・・?」
「ここは、少々特殊な場所ですので・・・実はですね、 出 る んですよ」
まるでB級の恐怖映画のシチュエーションだった。
山奥の幽霊屋敷。宿代はあなたの命です。生きて帰ることができるでしょうか。裏のパッケージはこんな感じだろうか。
顔を引き攣らせる俺に、女将さんはにっこりと笑いかける。そして、薄く口を開き、まるで歌う様に言葉を発した。短い曲かと思うくらい、綺麗な言葉だった。
聞いたことのない言葉。どこの国の言葉なのだろう。
「ようこそ、精霊荘へ。歓迎いたしますよ」
ようやく聞きとれた言葉は、それだけだった。
「フリオ、お客様のご送迎は済んだ?」
項垂れるように頭を下げたままだった俺は、ようやく背骨を真っ直ぐに伸ばし、宿の玄関を振りかえった。不機嫌そうな顔丸出しで。
「あらまぁ、どうしたの?だめよそんな顔しちゃ」
「こんな所って言われました。今の客に」
「フリオ」
女将さんの横を通り抜けて、引っかけサンダルを脱いで廊下にあがろうとすると、少し怒ったような、呆れたような声で引きとめられた。
「・・・・すみません。『お客様』に、そう言われまして」
「よろしい」
「よろしくないですよ!失礼じゃないか、こんな所って!」
「でもあなただって、最初はそう思ったでしょ?」
「・・・・・」
図星を突かれて、ぐうの音もでなかった。おまけに、女将さんの事を幽霊だと思いました、なんて言ったら、温厚なこの人だってついには怒りだすだろう。
「あの方たちに、裏庭へご案内はしたの?」
「はい、もちろん。ちっさい花畑だな、って溜息付いてました」
「じゃあ、坂の下の湖には?」
「しましたよ。なんだか濁ってて、カエルでも出そうね、ってすぐ引き返しました」
「山を下りて、プライベートビーチには?」
「砂が熱くて歩けない!って遠目から海を眺めていただけです」
女将さんからの質問に、全て悪態をつけながら話す。全部本当の事だった。この宿自慢の全てのスポットを紹介してやったと言うのに、あの夫婦はそれに全然興味なさそうに、山を下りた先にある、アルテアの青い泉や砂金のように煌めくビーチへの関心でいっぱいだった。それを見に行くには少し遠いが、ここで宿代をうかせようという魂胆だろう。
「最近、あんな客・・・お客様ばかりです。女将さんは、嫌じゃないんですか?」
「世の中いろんな人がいるからねぇ。なんとも言えないわ」
「なんとか言ってください、たまには」
「そうねぇ。じゃあ言うけど、宿代の代わりに『こんな所』で働かせてほしい、だなんて言う人は変わってるわぁって思うのよねぇ」
「・・・・・」
目尻をくしゃっと歪ませながら、女将さんはチラチラと俺の方を見ながら、ほほほ、と笑っていた。
1晩泊めてもらったあの日の夜、くたくたに疲れていて、部屋のベットに身を投げるようにダイブした。けれど、目を閉じれば、アルテアの町を思い出す。
マリアはまだ俺を探して、夜の街を彷徨っているだろうか。小父さんは・・・小父さんも俺を探してくれているだろうか。レオンハルトは、俺の部屋に残された学術書を全部燃やしているんじゃないか。
一晩中、悪夢を見ていたような気がする。夢の中で、1度だけ「ああ、これは夢だ」と気がついてからは、その恐ろしい物語が、夏に目にする陳腐な恐怖番組のように思えて、怖くもなんとも無くなっていた。
空が白みはじめた頃、時計を見ればまだ4時だった。鉛のように重い体を持ち上げて、窓辺に立ち、薄いカーテンを開ける。随分高い場所に来たものだ。徒歩で半日も登ってきたから、当たり前なのだろうけど。少し風に当たろうと、窓を開けて冊子に座り込む。足を伸ばして、冷たい石段の上に乗せたまま、ずっと、これからのことを考えていた。
樹木医になる夢も。稼いだ金で小父さんを旅行に連れて行ってやる夢も。いつの日かマリアが選んだ人との結婚式に出席する夢も。レオンハルトを兄さんと呼べる日が来るようにと願う事も。すべての道が、塞がれてしまったような気がした。
膝を抱えて、まるで子供のように啜り泣いた。ここは虫の鳴き声と、木々のざわめき以外は聞こえなくて。静かで、静かすぎて、嗚咽する自分が情けなくて、耳を塞ごうとしたその時だった。
歌声が聞こえた。まるで聞いたことのない外国の、いや、この世の言葉ではないような、不思議な言葉で奏でられた、歌声。
先刻、女将さんが発したあの言葉によく似ていて、頭の中からそれを引っ張り出してきてやれば、ぴったりと一致した。そして、さらにこの場所の名を思い出す。
『精霊荘』
「ねぇ、フリオ」
「はい」
「あなたはもう『誰か』に出会った?」
女将さんの問いかけに、静かに頷いた。
「やっぱり、人を選んで姿を現すのね。あの子たちは」
あの子たち、と親しげに呼ぶ女将さんは、もう何年も前から、『見えて』いたらしい。
あの夜、歌声に誘われ、夢遊病患者のように庭へ歩き出した。石段にサンダルが置いてあったが、それを履こうとするより先に、身体が歌声のする方へと引き寄せられていく。しっとり湿った土と、生い茂った草がくすぐったいくらいに足を刺激するが、そんなものに構っていられなかった。宿の入口の反対側。高台から降りる天然の木の階段を足を滑らせないように下りて行く。20段以上の高い階段を、時には手を付きながら下りきると、そこには一面に真っ白な花畑が広がっていた。目を凝らすと、色とりどりの野花が咲いているのだが、朝靄のせいで白にしか見えなかった。
白を多く含んだ青空に星々はまだ浮かんでいたが、東の空からゆっくりと太陽が登り始めた。花畑の崖の下は、濃いブルーが広がる。水平線から燃えるような太陽が顔を現した。
まだ歌声は聞こえる。さっきよりずっと小さくなってしまったけれど、それでもどこかで『誰かが』謳っている。
花畑の中心にたち、靄を払う様に腕を振り回した。本当に病気の沙汰のように見えるその行動を誰かに見られたらおかしく思われるだろう。けれど、ここには誰もいない。
『誰もいない』のに、『誰か』が居る。
白い靄の中、目を凝らしながらぐるりとその場で一周する。逆回りにもう一周。足がもつれそうになって、もう一周。
その時、白しかない視界に、ほんのりと緑色に光る影が映ったような気がした。靄が晴れてきたおかげで、周りの木々が見えてきたようだ。ひょっとしたら、花畑からではなく、森の方からかも・・・そう考えて、影の方へと遠慮なく進んだ。
そうして、『見えた』。白い靄から抜け出した瞬間だった。一目で「あ、人間ではないな」と、頭の中に浮かんできた。『彼』か、『彼女』なのかは解らない。中性的な、絵にかいたような美しいものだった。土色の髪に、顎の細い輪郭、長い手足に、花の香り。顔を見ようと目を凝らす。深い森のような色の瞳と、目が合った。
瞬きをした瞬間に、その姿は消えていて俺は慌てて辺りを見渡す。気がつけば歌は止んでいて、サクサクサクサク、と細やかな音が遠ざかって行った。
太陽が花畑を照らしきるまで、俺は呆然と立ちすくむことしかできなかった。太陽が己の姿を見せつけるように登って行って視界を遮る靄は消えていた。ようやくパステルカラーの花畑の全貌が見渡せたが、不自然に派手な色で咲く花があった。
深紅のバラだった。去りゆく『誰か』の足跡のように、赤道線のように真っ直ぐに何輪も咲いていた。
「俺が『見た』のは、まだ一人だけです」
「そぉ」
「あの・・・・」
「なぁに?」
いつも以上にゆったりと返事をする女将さんに、一音一音、ゆっくりと言う。
「もっと、見たいんです。『精霊』を。出来れば、全部。ここに住んでいるのを、全部。それまで、ここで、働かせていただけませんか?」
女将さんは驚きもせず、ただいつもの笑顔を絶やさずにいた。
「それじゃあ、いっぱい働いて貰わなきゃねぇ」
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